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東京地方裁判所 昭和62年(ワ)445号 判決 1988年1月26日

原告

佐伯日出男

ほか一名

被告

有限会社石勝運輸

ほか一名

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

一  請求の趣旨

1  被告有限会社石勝運輸(以下「被告会社」という。)及び同田守貢(以下「被告田守」という。)は、各自、原告佐伯日出男(以下「原告日出男」という。)及び同佐伯信子(以下「原告信子」という。)に対しそれぞれ一二〇〇万円及び右各金員に対する昭和六〇年六月八日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  事故の発生

訴外佐伯広人(以下「広人」という。)は、昭和六〇年六月七日午後九時五三分ころ、東京都中央区勝どき一丁目八番四号先の晴海通りの交差点(以下「本件交差点」という。)において、訴外菅原義治(以下「菅原」という。)が運転し、本件交差点を晴海方向から銀座方向に向けて進行中の自動二輪車(足立第六七三〇、以下「被害車」という。)の後部座席に乗車していたところ、被害車が本件交差点を対向右折してきた被告田守運転の大型貨物自動車(帯八八あ八三四、以下「加害車」という。)と正面衝突したため、頭蓋骨骨折、右肺裂創・挫傷、肝挫裂創等に基づく外傷性シヨツクにより、同日午後一〇時四二分ころ東京都千代田区神田駿河台一丁目八番一二号所在の日本大学駿河台病院において死亡した(以下「本件事故」という。)。

2  責任原因

(一) 被告田守の責任

被告田守は、本件交差点を右折するに際し、前方注視義務及び徐行義務があるのにこれを怠り、夜間のため交通量が閑散であつたことから対向車両がないものと軽信して、漫然毎時二〇キロメートルの速度で右折進行した過失により本件事故を惹起したものであるから、民法七〇九条により、原告らの後記損害を賠償すべき責任がある。

(二) 被告会社の責任

被告会社は、加害車を保有し、これを自己のために運行の用に供していた者であるから、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条により、原告らの後記損害を賠償すべき責任がある。

3  損害

(一) 広人の損害 合計五六五八万〇六七五円

(1) 逸失利益 三六五八万〇六七五円

広人は、死亡時の年齢が一七歳の健康な男性であつたから、本件事故に遭遇しなければ、平均余命の範囲内で一八歳から六七歳までの四九年間就労し、昭和六〇年賃金センサス第一巻第一表学歴計・産業計・企業規模計による男子労働者の全年齢平均年収四二二万八一〇〇円を下らない収入を得ることが可能であつたものと推定されるから、これを基礎とし、生活費を五〇パーセント控除したうえ、ライプニツツ方式に従い年五パーセントの割合で中間利息を控除して同人の逸失利益を算定すると、次の計算式のとおり、三六五八万〇六七五円(一円未満切捨て)となる。

(計算式)

四二二万八一〇〇円×(一-〇・五)×(一八・二五五九-〇・九五二三)=三六五八万〇六七五円

(2) 慰藉料 二〇〇〇万円

広人は、本件事故により死亡し筆舌に尽くし難い精神的苦痛を被つたものであり、この精神的苦痛を慰藉するためには、二〇〇〇万円をもつてするのが相当である。

(二) 原告らの損害 合計九〇万三二〇〇円

原告らは、左記の費用をそれぞれ二分の一ずつ負担した。

(1) 葬儀費用 九〇万円

(2) 文書料 三二〇〇円

(三) 相続

原告日出男は広人の父であり、原告信子は広人の母であるところ、広人の死亡により同人の被告らに対する損害賠償請求権の全額(五六五八万〇六七五円)をそれぞれ法定相続分に従つて二分の一ずつ相続した(それぞれ二八二九万〇三三七円、一円未満切捨て)。

(四) 損害の填補 合計二六四八万三二〇〇円

原告らは、自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」という。)から二六四八万三二〇〇円の支払を受け、これをそれぞれ二分の一(一三二四万一六〇〇円)ずつ原告らの被告らに対する損害賠償請求権に充当した。

4  結論

よつて、原告らは、被告らに対し、それぞれ各自の損害賠償請求権(一五五〇万〇三三七円)の一部である一二〇〇万円及びこれに対する本件事故の日の後である昭和六〇年六月八日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1(事故の発生)の事実は認める。

2  同2の(一)(被告田守の責任)の事実のうち、被告田守が本件交差点を時速二〇キロメートルの速度で右折進行したことは認め、その余の事実は否認する。

3  同2の(二)(被告会社の責任)の事実は認める。

4  同3(損害)の事実のうち、(四)(損害の填補)は認めるが、その余の事実は知らない。

三  被告らの主張(過失相殺)

1  広人が本件事故に至る経緯は次のとおりである。

(一) 広人と菅原は、中学校時代の同級生であるが、本件事故当日の昭和六〇年六月七日夜、伊豆大島の高等学校に帰る友人を竹芝桟橋まで見送ることに決め、以前同人らで暴走族を組織していた当時の仲間である中学の同窓生を誘つて竹芝桟橋まで行くことにした。

(二) 右両名は、竹芝桟橋へ行くに当たり自動二輪車を利用することに決め、同人らの後輩である川口猛からその所有する自動二輪車(被害車)を借りることにし、広人が自ら川口から被害車の鍵を借り受けて菅原に渡した。

(三) 被害車の運転は菅原が担当し、広人はその後部座席に同乗していたものであるが、菅原は無免許であるうえ、毎時一〇〇キロメートル前後の高速度で被害車を運転していたにもかかわらず、広人はこれを知りながらその後部座席に同乗を続けていた。

また、被害車のハンドルは通常のハンドルを変形させたロボツトハンドルであり、竹芝桟橋に行く途中においてこれを発見した警察官から被害車を道路端に寄せるよう指示されたにもかかわらず、これを無視して逃走した直後に本件事故が発生した。

(四) 本件事故当時、加害車は、右折の合図をしたうえ、低速度で右折を開始したにもかかわらず、被害車は、前方不注意のうえ、毎時一〇〇キロメートル前後の高速度で本件交差点に進入し、制動措置を採る間もないまま加害車に衝突したものである。

2  右事実によれば、広人にとつて、菅原が交通の状況に注意を払い所定の交通法規に従つた安全な運転をするであろうことは全く期待できず、同人の運転が極めて危険なものであることを知悉していたというべきであるところ、それにもかかわらず、転倒した場合には生命・身体に大きな損害を受けることが明らかな被害車の後部座席に軽率に同乗し、同人の危険な運転を許容していたこと自体、広人自身の大きな過失であるというべきであるから、広人の右過失を斟酌してその損害の六〇パーセントを減額すべきである。

また、右事実によれば、広人は、菅原との関係では単なる好意同乗者の域を超えて被害車の共同運行供用者の地位にあつたものというべきところ、広人にも被害車の運行利益が帰属していたことを考慮すると、民法七二二条を類推適用して、被告らの損害賠償額を定めるに当たつても菅原の運転上の過失を被害者側の過失として斟酌すべきである。

四  被告らの主張に対する認否

1  同1の事実のうち、広人と菅原が中学校時代の同級生であること及び本件事故当時被害車の運転は菅原が担当し、広人はその後部座席に同乗していたことは認めるが、菅原が無免許であることは否認し、その余の事実は知らない。

2  同2の主張はすべて争う。

道路交通法三七条は交差点内の直進車に対する進行妨害の禁止を定めているから、加害車の本件交差点内での右折進行が被害車の直進よりも優先するいわれはない。

また、広人は被害車の単なる同乗者にすぎず、菅原の過失が民法七二二条二項にいう被害者及び被害者側の過失に含まれないことは明らかである。

第三証拠

証拠関係は、本件記録中の書証目録記載のとおりであるから、これをここに引用する。

理由

一  請求原因1(事故の発生)の事実及び同2の(二)(被告会社の責任)の事実はいずれも当事者間に争いがない。

したがつて、被告会社は自賠法三条に基づき本件事故により原告らが被つた損害について賠償すべき責任がある。

二  そこで次に被告田守の責任について判断する。

1  請求原因2(責任原因)の(一)(被告田守の責任)の事実のうち、被告田守が本件交差点を毎時二〇キロメートルの速度で右折進行したことは当事者間に争いがなく、右争いのない事実に、成立に争いのない甲第二及び三号証並びに乙第一ないし五七号証を総合すれば、以下の事実が認められ、左記認定事実を覆すに足りる証拠はない。

(一)  本件交差点は、東京都中央区勝どき一丁目八番四号先の晴海通り(車道幅員一八メートル、片側三車線のアスフアルト舗装道路で第三車線は右折専用車線となつている。)と清澄通り(車道幅員二二メートル、片側三車線のアスフアルト舗装道路)とがほぼ直角に交差する信号機により交通整理の行われている交差点であつて、市街地に位置しているため、いずれの道路も歩車道が区別され、車両の交通量も多く、道路標識により最高速度四〇キロメートル、駐停車禁止、転回禁止の交通規制が行われていた。本件交差点の四隅には街路灯が設置されているため、夜間でも交差点内は明るく、路面は平坦で本件事故当時は乾燥しており、道路は直線状で道路上の見通しを妨げる設置物及び障害物はなく、本件交差点から晴海方向への見通しは約二〇〇メートル可能であつた。

(二)  被告田守は、加害車を運転し、晴海通りの第三車線(右折専用車線)を銀座方面から晴海方面に向けて進行し、本件交差点を右折するため、本件交差点の中心より約四五メートル手前の地点から右折の方向指示器を点灯させ、対面信号の青色表示に従い本件交差点を豊海方面に向けて右折しようとして毎時約二〇キロメートルの速度で加害車の前端部が対向車線のほぼ中央部に達する地点まで進行した際、同道路の対向車線ほぼ中央を晴海方面から銀座方面に向けて毎時約九〇キロメートルの速度で直進してきた被害車を加害車の前方約六・五メートルの地点で初あて発見して急制動の措置を採つたが、間に合わず、加害車を発見して急制動をかけた際に平衡を失つて転倒し路面を滑走してきた被害車に加害車の前部下側を衝突させた。

(三)  一方、菅原は、被害車の後部座席に広人を同乗させたうえ、晴海通りのほぼ中央を晴海方面から銀座方面に向けて前照灯を点灯しながら進行し、対面信号の青色表示に従い本件交差点に毎時約九〇キロメートルの速度で進入しようとした際、本件交差点を対向車線から豊海方面に向けて右折進行してくる加害車を発見し、慌てて急制動と共に進行方向左側に回避する措置を採つたが、その際に被害車の平衡を失つて左側面を下側にして転倒し、約四メートル路面を滑走して加害車の前部下側に被害車を衝突させた。

2  ところで、車両の運転者は、交差点を右折するに当たつては、対面信号が青色を表示している場合であつても、右車両をそのまま右折進行させるときには、一時的に対向車線を進行する直進車両の進路を妨害する状態となるため、直進車両との衝突事故を惹起する可能性、又は直進車両に急制動、急ハンドルなどの措置を採ることを余儀なくさせ、ひいてはこれを原因とする右車両の転倒若しくはその後続車両との追突などの事故を発生させる可能性のあることが十分に予測できるのであるから、対向車線に進入する直前で一時停止したうえ、対向車両の有無を確認し、対向車両のないことを確認したうえか、又は対向車両を発見したときには、その車両と自車との距離、その車両及び自車の速度、右折横断しようとする対向車線の幅員などの関係から右対向車両の進路を妨害しその運転者に右折車との衝突の危険を感じさせることのないことを確認したうえで右折を開始すべき注意義務があるものというべきである(道路交通法三七条)。これを本件についてみるに、前記1に認定した事実関係のもとにおいて、被告田守が右注意義務を怠り、対向車両の有無を確認しないまま漫然と右折を開始した過失により、対向車線を直進してきた被害車に気付くのが遅れ本件事故を惹起させたことが明らかであるというべきであるから、被告田守は、民法七〇九条に基づき、広人の死亡による損害を賠償すべき責任がある。

三  進んで原告らの損害について判断する。

1  広人の損害 合計三六二九万九〇五〇円

(一)  逸失利益 二三二九万九〇五〇円

成立に争いのない甲第一号証、前掲乙第二〇号証及び書き込み部分を除いて成立に争いがなく、同部分については弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第五八号証によれば、広人は、昭和四二年一二月一七日生まれ(死亡時の年齢一七歳)の健康な男性であつたこと、同人は、中学校を卒業後定時制高等学校に通学しながら東京都江東区内にある塗装店で稼働していたが、約一年間で中途退学すると共に右塗装店も辞め、昭和五九年九月から昭和六〇年四月までは同区内の運送会社で一か月平均約二二日間勤務し日給約八〇〇〇円を得ていたが、その後は職に就かず、両親の下で無為徒食の生活をしていたこと、同人の日ごろの行状は芳しくなく、原動機付自転車の無免許運転やシンナー吸引などによりしばしば警察の補導を受け、本件事故当時も家庭裁判所による保護観察中であつたことが認められ、右認定事実を覆すに足りる証拠はない。右認定の事実によれば、広人が、本件事故に遭遇しなければ、平均余命の範囲内で一八歳から六七歳までの四九年間就労し、昭和六〇年賃金センサス第一巻第一表学歴計・産業計・企業規模計による男子労働者の全年齢平均年収四二二万八一〇〇円を下らない収入を得ることが可能であつたものと推定することは困難であるといわざるをえないから、これを基礎として同人の逸失利益を算定することは相当でない。

右認定事実及び経験則に照らせば、広人が本件事故に遭遇しなかつた場合の就労可能期間は、同人が成人に達する二〇歳から平均余命の範囲内である六七歳までの四七年間にとどまり、また、前記のとおり、広人が昭和五九年九月から昭和六〇年四月まで江東区内の運送会社に勤務し一か月平均約二二日間就労し日給約八〇〇〇円を得ていたこと及び昭和六〇年賃金センサス第一巻第一表産業計・企業規模計による男子の小学・新中卒労働者の全年齢平均年収が三八三万五三〇〇円であること(右事実は、当裁判所に顕著な事実である。)を考慮すると、同人の右就労可能期間における平均年収は、たかだか三〇〇万円程度と推定するのが相当である。

そこで、右就労可能期間及び平均年収を基礎とし、生活費を五〇パーセント控除したうえ、ライプニツツ方式に従い年五パーセントの割合で中間利息を控除して同人の逸失利益の現価を算定すると、次の計算式のとおり、二三二九万九〇五〇円(一円未満切捨て)となる。

(計算式)

三〇〇万円×(一-〇・五)×(一八・二五五九-二・七二三二)=二三二九万九〇五〇円

(二)  慰藉料 一三〇〇万円

前記認定の本件事故の態様、広人の本件事故当時の年齢及び生活状況等の諸般の事情を考慮すると、本件事故による広人の精神的苦痛を慰藉するための慰藉料は、一三〇〇万円が相当である。

2  原告らの損害 合計九〇万三二〇〇円

弁論の全趣旨によれば、原告らは、広人の葬儀費用として九〇万円及び文書料として三二〇〇円をそれぞれ二分の一ずつ負担したことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

3  相続

前掲甲第一号証によれば、原告日出男は広人の父であり、原告信子は広人の母であることが認められる(右認定を覆すに足りる証拠はない。)から、原告らは、広人の死亡により同人の前記損害賠償請求権の全額(三六二九万九〇五〇円)をそれぞれ法定相続分に従つて二分の一ずつ相続した(それぞれ一八一四万九五二五円)ものというべきである。

4  過失相殺

広人と菅原が中学校時代の同級生であることは当事者間に争いがなく、前掲各証拠によれば、被害車は、もと菅原が所有していたものであり、同人の中学校の後輩である川口猛が昭和六〇年一月に代金二〇万円で菅原から譲り受けたが、本件事故当時右代金のうち二万円が未払であつたこと、広人と菅原は、本件事故当日の同年六月七日夜、伊豆大島の高等学校に帰る友人を竹芝桟橋で見送ることに決め、以前同人らが組織していた暴走族の仲間を誘つて同桟橋まで赴くことにしたこと、右両名は、同桟橋へ行くに当たり自動二輪車を利用することに決め、川口からその所有する自動二輪車(被害車)を借りることにし、菅原が川口から被害車を受け取り、その鍵は広人が川口から借り受けて菅原に渡したこと、被害車の運転は中型二輪の免許を有していた同人が担当したこと、広人は、その後部座席に同乗し、菅原が制限速度を大幅に超える高速度で被害車を運転しているのを知りながらその後部座席に同乗を続けていたこと、被害車のハンドルは通常のハンドルを変形させたいわゆるロボツトハンドルであり、竹芝桟橋に行く途中の交差点で赤色信号により停止中、このハンドルを発見した警察官から被害車を道路端に寄せるよう指示されたにもかかわらず、菅原と広人はこれを無視し、青色信号に変わるや否や菅原は高速度で被害車を発進させて逃走したこと、本件事故はその数分後に発生したものであること等の事実を認めることができ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

右事実によれば、菅原が制限速度を大幅に超える高速度でしかも変形ハンドルの被害車を運転していたのであるから、これに同乗していた広人としては、被害車が転倒することがありえ、転倒した場合には自己の生命・身体に損害を受けうることを予見できたものというべきであるところ、同人は、菅原の運転する被害車の後部座席に同乗し、同人の危険な運転を容認していたばかりか、これを助長促進していたものというべきである。そして、前記認定のように、本件事故の発生には、菅原が制限速度を大きく超える毎時約九〇キロメートルの速度で被害車を本件交差点に進入させようとした過失が大きく寄与しているものと認められるところ、広人がこのような菅原の過失を容認していたばかりかこれを助長促進していたことは、同人自身の過失というべきであるから、損害の公平な分担の観点から同人の右過失を斟酌し、同人及びその両親である原告らの損害額の三割を減額するのが相当である。

したがつて、原告らの被告らに対するそれぞれの損害賠償請求権は、前認定の一八六〇万一一二五円からその三割を減額した残額である一三〇二万〇七八七円(一円未満切捨て)となるものというべきである。

5  損害の填補 合計二六四八万三二〇〇円

原告らが自賠責保険から二六四八万三二〇〇円の支払を受け、これをそれぞれ二分の一(一三二四万一六〇〇円)ずつ自己の損害賠償請求権に充当したことは当事者間に争いがなく、本件訴状における申立及び主張に鑑みると、原告らは、右自賠責保険金を原告らの損害賠償請求権の元本に充当し、右充当時までに発生した保険金額相当額に対する遅延損害金の請求をしない意思であると解されるところ、原告らの過失相殺後の損害賠償請求権の元本がそれぞれ一三〇二万〇七八七円であることは既に認定したとおりであるから、結局、原告らの損害は自賠責保険からの支払によりすべて填補されたことになる。

したがつて、原告らの本訴請求はいずれも理由がないことに帰する。

四  以上のとおり、原告らの本訴請求はいずれも理由がないのでこれを失当として棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 柴田保幸 中西茂 潮見直之)

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